図書館から借りてきて、もう何日眺めていることか。
なんとも美しい写真集『ノースウッズ――生命を与える大地』(クレヴィス、2020年2月)である。
カヌーとテントで20年間もかけて撮ったのは大竹英洋(ひでひろ)さん。全く知らないひと。でも、星野道夫さんの力量を引き継ぐカメラマン(と勝手に言ってもいいのではないか)。
太古の、大昔から全く変わらぬいのちの世界である。
オオカミ、カリブー、フクロウ、ビーバー(よく撮っている!)。
雨、稲妻、オーロラ(これもなんと神々しいことか)。
これらが在る広大なカナダの原生林ノーズウッズ。「生命を与える大地」(なんといいサブタイトル)。
ひとが制御できない、いのち世界。生と死。性、生殖。病い、老い、あるいは狂気。どう踠いても、ひとはこれらをアンダーコントロールに置くことは不可能。
ひとが成長志向型産業社会のもくろみによって「自己実現」なんていう迷信に乗って、自我感情を肥大化させ、妄想によって、この100年200年間いのちの世界を檻(おり)に閉じ込めようと努力しつづけてきた。
ムダな努力。無理だ。コロナウイルスによって、改めて無理だとわかる。
ウイルスも命の環(わ)のひとつ。仲間だ。
コントロール下に置き、ワクチンで叩き潰すなんて妄想中の妄想。
いのちを与える大地ノーズウッズの豊穣さが以上のことを示現してくれる。
とっても清々しいいのちの世界。
(12月2日)