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心の戸を開けてごらん−中平順子さんの紙芝居ワールドへようこそ
 「紙芝居の箱の中は、生きるエネルギーです。心の光です。」
 中平順(より)子さんのコトバだ。
 中平さんの紙芝居の舞台は、特製の木箱(童心社で販売している)。正面の板が三分割されており、紙芝居が始まるとき、左右と上の三方にオープン。すると、紙芝居のタイトルと表紙絵が見える。
 「さあ、はじまり、はじまり」である。
 『ごきげんのわるいコックさん』(まついのりこ、童心社)ならば、ムッとした顔のコックのおっさんがどーんと登場し、始まる。
 このひげのおっさん、虫のいどころが悪い。しかも、どんどん機嫌が悪くなる。ムニュムニュ。プンプン。カチン。
 とうとうこのおっさん、こっちを向き、そっぽをむく。さて、困った。どうしようか…。
 そこで、「みんなで『コックさーん、こっち向いてー』って言ってみようか」と呼びかけ、みんなの参加を促す。上演者も参加者の老若男女も声をあわせていっしょに「こっち向いてーっ。」
 すると、このおっさん、急にニコニコえびす顔。根がすなおなんだ。機嫌がなおったのだから、おっさんにおいしいものをつくってもらおうね。よい考え。
 クンクン。いいにおいだね。
 くるくる。ぐるぐる。ぐつぐつ。料理する音っていいね。
 わあー、ペロペロキャンディーだ。これを参加者で分かちあって、ペロペロといただく。「おいしいね。」
 最後は、コックのおっさんもペロペロ−。
 以上が名作『ごきげんのわるいコックさん』である。おもしろいでしょう?
 わずか12枚の絵と、舞台の真横に立った上演者のセリフ(アドリブもあり)と、参加者の心によって構成されるシンプルな演劇。きわめてシンプル。原初的な演劇。
 日本では戸をするすると引いて、開ける。引き戸文化である。ドアでは、ない。
 玄関の戸や縁側の戸をまず引いて開けて、「こんにちは」。障子を開け、前座敷に入り、「失礼します」。襖を開け、奥座敷や仏間に入り、「おじゃまさま」。板間、土間に入り、「元気だった?」……。
 こんな引き戸文化の背景にして、参加者の心も上演者の心もしだいに開いていく。紙芝居の絵を1枚1枚引いていくことによって、開いていく。
 共感のあたたかい感情が広がっていくんだ。
 『ごきげんのわるいコックさん』ならば、実際、ペロペロキャンディーが心に誕生し、おいしく舌で味わうことができる。フィクションなのに、キャンディーの甘味が口の中にリアルに広がるんだ。それぞれのひとにほんわりと広がるのだ。
 ファンタジーの扉が開いてゆくからだ。
 心って、ホントに、おもしろい。
 紙芝居って、実におもしろい。
 中平さんが上演する紙芝居の木箱の中には、生きるエネルギーがつまっている。光がみちているんだ。
    講座・言葉を紡ぐ(第61回)

 2006年6月25日(日)の午後3時から6時まで。
 論楽社(京都市左京区岩倉中在地町148)。 
 中平順子さん(紙芝居実演グループ「紙ふうせん」代表、子ども文化研究家)の「心の戸を開けてごらん−紙芝居の喜びの世界へ」。スピーチと紙芝居の上演ライブ。
 参加費2000円(大学生以下1500円)。
 要・申し込み。
 問い合わせ・申し込み先は論楽社(075-711-0334)。
 
 中平さんは論楽社にいままで2回来ていただいている。2005年2月11日の「紙芝居はおいしい、おいしい」と2005年7月25日の「紙芝居・真夏の夜の夢」である。それぞれがワークショップで、けいこをつけていただいた。私も指導をうけた(論楽社ほっとニュース「本質をとりかえす方法」2005年8月8日号を見てね)。
 中平さんは、岩手県岩手郡の小栗房子さんによって紹介された。小栗さんを紹介したのは、森崎和江さん。
 ふしぎで、楽しい出会いだ。
 いま、「人格の完成」をめざす教育基本法が改正されようとしている。教育基本法を目の敵(かたき)にして壊そうとするひとが、いる。「少年犯罪が多いのはすべて教育基本法のせいだ」とばかりに。
 「小さな政府がよろし」「世の中しょせん弱肉強食でっせ、路上死するひとも自己責任や」というリバタリアニズム(Libertarianism)が、「やっぱり国家に守ってもらわんとワシは不安」「愛国心でっせ」という国家主義にむすびついていく矛盾。そのニヒリズムのありようが興味深いけどね……。
 中平さんは語る。「文化はいのちを守り育てあうことです。自分のいのちを守り育てることです。人間としての喜びを深めあうことです。」
 厳しいときこそ、心の戸を引いて、開くことが大切なのではないか。憲法第9条に八つ当たりしないで。
 「子どもは、大人の認識力によって、育つ。」
 これも中平さんのコトバ。
 大人の認識力とは、「いかにいのちを愛しているか」という力ではないのか。
 2006年の夏至近くの6月25日に、中平さんに出会ってほしい。待ってるぜ。
| 虫賀宗博 | 講座・言葉を紡ぐ | 16:29 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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