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連載コラム「いまここを紡ぐ」(第364回)生きるという仕事――7年間書きつづけてきて(その1)
 連載コラム「いまここを紡ぐ」を書き始めたのが、2005年7月1日である。
 もうすぐに丸7年を迎える。
 ひとえに楢木祐司さんのおかげである。ありがとう。
 私には格別の能力というものがない(自分自身がいちばん気づいている)。そんな私にもいまここを味わうことはできる。特別なことは何も書けないけど、「こんなことがあった」「こんなひとに出会った/別れた」「あのひとのことを想う」という作文ならば、綴ることができるかもしれない。そう思って、始めたのである。
 「伝わっているのかな」「読まれているのかな」「まだ続けていいのかな」と思う。
 やってみると、おもしろかった。私には。
 Aだと思っていたわが心は実はBだったり、Cだったりする。書いてみないと、やっぱりわからない。心はわからない。コロコロと転がっていく。深呼吸し、机に向かい、わが心の声に耳をかたむけないと、わからない。
 あるときから、「忘れるために書いていく」ということに気づく。書いては捨て、書いては忘れていくのである。現実的に、1か月前に何を書いたか。すべて、私は忘れてしまっている(笑)。だから、ひょっとして、同じことを書いているのではないか――という心配が発生しているけど。まあ、そういうことになったら、「ついに彼も……」と思って、許してください。
 毎週毎週座禅を組むようにして原稿用紙に向かってきた。この手作業を7年間つづけた。心が少しずつ落ち着いてくるようになってきた気がしている。まるで作文治療のような効果があったのか、とも思う。楢木さん、ほんとにありがとう。
 7年間、影の主役のような存在が上島聖好さん(1955〜2007)であったのかもしれない。パートナーだった女性である。
 彼女にはもっともっと自らの阿頼耶(あらや)識を見つめ、自らをもっと大切にしてほしかった、死なないでほしかった――といまでも思う。
 けれども、現実的には彼女は違っていた。
 愛されることを強く求めたし、尽くされることを強く願った。私はその要求に応えることはできなかった。すると、彼女は怒った。私のイノセンス(私にもあるよ)を傷つけようとした。その後で、すぐにあやまったけど。
 そのくりかえしであった気がしている。
 「人生はままならぬものである」という鉄則を、20年前、30年前の私はまだ理解していなかった。結婚への幻想もあった。子どもがほしかったし、「こんなはずじゃない」と思った。結局のところ、若い私は彼女を嫌い、憎んだのだと思う。
 嫌うことによって、自らの存在を傷つけていった。自らを受容できなくなっていった。自分自身が嫌いになっていったのであった。
 私は愚かであった。憎しみの種子(しゅじ)を自らの阿頼耶識に蒔いてしまった。次々に発芽するんだ。まるでわが心が大火のようになるのであった。苦しかった。すべてが私の愚かさのせいであった。
 わが心の消火と浄化に、結局20年もかかり、とくにこの7年間は書きながら、内観してきた。
 何度もヘコたれた。泣き虫の虫賀はメソメソと泣いた。
 くじけそうになると、ミッシェル・ド・モンテーニュの、あるページを決まって開いた。音読した。

 「それにしてもわれわれは大変な愚か者なのである。だって、『彼は人生を無為にすごした』とか、『今日はなにもしなかった』などというではないか。とんでもないいいぐさだ。あなたは生きてきたではないか。それこそがあなたの仕事の基本であるばかりか、もっとも輝かしい仕事なのに。」(『モンテーニュ エセー抄』(みすず書房、宮下志朗の新訳、2003年、P.209〜210)

 そうなんだ。私は生きてきたし、いまここを生きているんだ。
 すべてが私の内部の阿頼耶識から発生しているのである。憎しみの種子を自らがいったん蒔いてしまったのだから、刈りとり、摘みとり、抜きとることに20年の月日がかかったのだ。長い年月だ。でも、ありがたいことにやっと終わったのである。
 《彼女のせいで私は苦しかったのでない》。これはキッパリと言っておきたい。彼女は縁起のほんのひとつでしかないのである。7年間書きつづけ、考えつづけ、辿り着いたのは、このこと。《彼女のせいでない》のだ。
 シンプルだ。すべてが私の阿頼耶識が生成する映像であったのだ。夢のような幻影だった。
 私は彼女のこと、好きだったのだと思っている。過去形だけどね。(つづく)
(6月21日)
| 虫賀宗博 | いまここを紡ぐ | 06:16 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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