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連載コラム「いまここを生きる」(第124回)心の障害者になるな――大石順教さんからのメッセージ
 誘われて、11月5日(水)に和歌山の九度山と高野山へ、明子と行った。
 九度山は「くどやま」と読む。高野山の手前にある。表参道の玄関口の小さな町だ。
 小さいけど、ひとびとの歩みの音を聴いてきた道が連なってあり、とってもいい。空も広くて、のびやか。
 その九度山に萱野(かやの)正巳さんがいて、「大石順教尼の記念館」を5年前から開いているから、行ってみることになったんだ。
 誘ってくれたのは、奈良の浦田幾子さん。大石順教さん(1888〜1968、以下順教さんとする)を教えてくれたのも、浦田さん。縁をつくっていただいた。ありがとう。
 実は浦田さんの夫の実家が萱野さん宅からほんの近所。5年前のあるとき、いつものように墓参りに帰ると、「記念館」が生まれている。「あれ!?」と思って、入ってみた。
 初めて順教さんの実存に出会う。
 順教さん、17歳のときに養父によって両手を日本刀で斬り落とされている。
 なのに、私などでは考えられないことに、養父を恨んでいない。全く。許しきっている。――この出発点からしてスゴイ。ひょっとして、「内的な宗教心を開花させるために養父がいて、日本刀を持たしたの?」ということかもしれないと思うほど。とにかく、スゴイ。
 「無手。無学。無財。この三つの『無』が私をしあわせにしてくれた」――と晩年の順教さんは語っている。
 無文字の順教さんは19歳のとき、カナリアがくちばしでひなに餌を与えるのを見て、両手がなくても口で筆を使えることに気づく。
 「あいうえお」から、とにかく寸暇を惜しんで、筆の練習を重ねつづける。その結果、見事な筆さばきの書が「記念館」に残る。書は心の軌跡。いかに自由であったか。
 長島愛生園の近藤宏一さん(1926〜2009)の点字舌読やハーモニカ演奏に匹敵するスゴサ。
 順教さん、身体の障害者のひとたちに、繰り返し繰り返し、「心の障害者になるな」と言いつづけたひとだった。
 まあ、希有なひとである。
 萱野さんに会った。のびやかな、オープンマインドのひと。
 「順教尼はおばあちゃんのようなもんやった、私は孫のようなもんやったなあ」と静かになつかしそうに語る。
 祖父の萱野正之助が順教さんの出家の菩提親。
 1933年高野山にて得度したのである。順教さん、45歳のとき。
 萱野さんのファミリーは、順教さんと格別の縁があったのである。
 「記念館」を辞し、高野山へ登る。
 1953年に建立された腕塚(うでづか、かないづか)に手を合わせるため。奥之院に、48年間ホルマリン漬されていた順教さんの両腕が納骨されている。
 高野山。848メートル。残念ながら、今回も足では登らない。ケーブルを使って、上がる。
 カエデ、ケヤキの葉はほぼ散っている。風はない。
 しかし、深山の濃厚な気に満ちている。山は標高ではないね。
 同行の浦田さんとゆっくりと話す。しずけさのあるひと。いっしょにいて、気持ちがいい。
 私の知らない空海(774〜835)について、ポツリポツリと教示していてくれる。
 腕塚があった。奥之院に入って比較的すぐのところ。わかりやすいところにある。
 手を合わせる。心の中でなぜか「四弘誓願文(しぐせいがんもん)」が浮かんできたので唱える。
  衆生無辺誓願度
  煩悩無盡誓願断
  法門無量誓願学
  仏道無上誓願成
 弘法大師御廟に着く。浦田さん、五体投地をしている。「おおー」と思いながら、私は私でもういちど、心のなかで「四弘誓願文」を唱える。
 見上げると、月。
 十三夜の月。
 ぽっかりと浮かび、他に雲もない。音もない。
 気はあくまでも澄んでいる。
 とってもゆたかに、何かから祝福されているかのような気分に満ちる。
 《それぞれのいのちを生き抜け、いのちをやり遂げろ、それだけで祝福!》という思いに溢れる。
 順教さんからのメッセージかもしれない。
 《手があってもなくても、学があってもなくても、財があってもなくても、心の障害者にならず、いのちを祝福していこう。》
 そう思った、小さな旅。
(11月13日)
| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 10:20 | comments(1) | trackbacks(0) | - | -
「心の障害者になるな」とは、気になる言葉遣いだと思うのですが、どうとらえたらいいのでしょうか。障害者を否定的にとらえておられるのでしょうか。お教えください。
| トラジロウ | 2014/11/16 10:36 PM |










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