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連載コラム「いまここを生きる」(第147回)永源寺温泉
 「論楽社って、何か」を自問し、「小さな、小さな『村』『共同体』」と自答している。いま、まとめて書いているので、集中的にそのことについて考えている。
 村落共同体はもう現存しない。村にあった何かをいまに生かして、どこか少しでも相互扶助のつながりを形成していたい――。そんな願いが、いまも消えず、あることに気づく。
 その願いが、論楽社の形になっているのだと思う。
 その共同体づくりのようなものを、宗教や政治を抜いて、34年前に試行しはじめ、いま、宗教も政治も入れて試行しているのだと思っている。
 その試行の手立てになるのが、手紙ではなかったのか。
 あのひとへ、このひとへと、手紙を34年間出したと思う。
 出せば、返事が来る。うれしい。
 その返事の手紙を2年分ずつ、ダンボールに詰めて、小さな蔵に入れておいている。
 その数、20個。それに、ホームスクールづくりの作文、紙芝居が5箱もあった。
 溜った。けっこう溜った。
 「よし、少しずつ整理しよう」と思い立ち、半年前から作業をやっている。不用の本、書類、チラシも同時に処分整理している。まだ、途上。年内に終わりたい。
 すべてを見る。チラッと読む。
 死別したひとが多い。生別したひともいる。でも、それぞれが私の中で「生きている」のを感じる。それぞれが死んでいない。別れてはいない。
 いろんなひとの声がコンコンと湧き上がってくる。

 「人間は伸びなければならない」「生きた人間になりなさい」と金在述さん(キム・ジェスル、1907〜93)。
 「動けば、動くんです」「あなたがいて、私がいるんです」と伊奈教勝さん(1922〜95)。
 「生きることに飢えがわいていました」「(らい予防法の)被害者だけど、人生の敗北者ではありません」「らいになって、よかったです」と近藤宏一さん(1926〜2009)。
 「もっと狂えよ、オレは狂って生きてきたぞ」と谷川雁さん(1923〜95)。
 「平和と経済発展は両立しません」と中村哲さん(1946〜)。
 「辛抱してむしろこの自然環境を守っていくことで、それが生きてくるときが必ず来るんだ」と松下竜一さん(1937〜2004)。

 こんな声が次々に浮かんでくる。湧いてくる。
 ありがとう。ありがとう。ありがとー。
 最近、こんな夢をしきりに見る。
 「(ふしぎとなつかしいところへ)引越ししていく」。
 「(引越したところで田畑のような何かを)耕し、水を引き、収穫している」。
 何かが新しく生まれ変わっていく。
 そんな実感がたしかにある。
 その実感と声、姿が湧くと同時に、おもしろいことに疲れも湧く。これがおもしろい。人生だね――。
 あと4か月で私も還暦。
 還暦の「本卦(ほんけ)がえり」の物語はおもしろい。チャラにしてゼロから再出発していく物語だ。私の内部に起きていることに通底しているかも。再スタートだ――。
 単に冬の疲れが出てきただけかもしれない。
 でも、30年間の積りに積った、溜りに溜った疲れがある気がする。
 もっと、もっと疲れを出そう。
 そう思って、永源寺温泉へ、4月の中旬、明子と行ってきた。鈴鹿山脈の麓だ。近江八幡から無料送迎バスが出ている。
 38度。単純泉。さっぱりした湯。
 湯舟から望める愛知(えち)川がいい。ちょっとだけ急流。ざあ、ざあと音を立てて流れている。岩が白い。山が新緑に笑っているかのよう。
 雲ひとつない青空。風もない。その空を眺め、川の音だけを耳に入れ、湯につかる。ゆったりと、つかる。
 首、肩、腰に、(還暦のお祝いかのように、生まれて初めて)膝。
 四天王の痛み。「休め、休め」と訴えの痛み。
 もんで、ほぐす。ほぐして、もむ。深呼吸。深呼吸。
 30年分の疲れよ、湧きいでよ。もっと、もっと、湧け――。
 すぐ隣の永源寺もいい。少し遠い春の始まりの風景。方丈(本堂)には誰もいない。
 シッティング・メディテーション。いまここに帰る。
 いい禅寺。
 温泉とまるでセットのようにある瞑想禅寺。
 内部の声を聞きながら、内部の疲れを外部へ出して出すひととき。
 みんな、ありがとう。ありがとう。ありがとー。
(4月23日)
| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 23:40 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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