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伸びていこう――中平順子さん、ありがとう、ありがとう(その2)

 中平順子さんの紙芝居のレポート。12月10日のワークショップの報告。
 いっぱい書けそうだけど、短くまとめる。「紙芝居って、何か」のポイントを伝えられたら、いいね。
 今回も具体的な作品を紹介する。
 再び、まついのりこさん(脚本・絵)の『ごきげんのわるいコックさん』(童心社、税別1600円、地域の図書館にリクエストしてみて)。
 なぜか不機嫌なコックさんが登場。ヒゲをピンと立て、口をムッと閉ざしている。虫の居所が悪いんだ。
 これは誰にもあること。
 演じ手(中平さん)からいくら呼びかけられても、心を開こうとしないコックさん。
 ところが、観客参加者から「こっち向いて」と呼びかけられると、コックさん、前を向いて、なんとニコリと笑うではないか。
 声が通じたんだ。うれしい。
 機嫌がなおったコックさん、みんなを喜ばせる技があるよね。そう、おいしいものがつくれる。
 コックさんがキャンディーをつくる。
 参加者ひとりひとりに中平さんがキャンディーを渡す(フリをする)。
 そのキャンディーは「心の食べもの」。
 心を満たす「食べもの」だ。
 その「心の食べもの」をコックさんも中平さんも参加者のひとりひとりが、みんな、食する。実際、みんなで「現実にはない」食べものを食していくことがポイントだ。
 個人と他者が分かちあい、双方向に見つめ合う空間が生まれる。これが社会というものの原型。言葉というものによって紡ぎ出されていくのである。おもしろいねえ。
 作品の脚本と絵、演じ手の語りかたと間(ま)――そうなんだ、この間のとりかたが大切、この間によって、ふしぎな社会がみんなの心に生成するんだ――によって、ひとに共感しながらも、自分らしさに気づかされ、私らしさが受認されるようになる。
 この紙芝居、日本文化のオリジナル。落語の流れを汲む語りの芸に位置。他国では生まれなかったことをしずかに味わってみてもいい。
 最後に『おかあさんのはなし』(童心社、税別1900円、リクエストしてみて)。原作アンデルセン、脚本稲庭桂子、絵いわさきちひろ。
 心に沁みた。
 原作ではラストにおいて「神の御心のままに」とおかあさんが死に神にわが子をゆだねる。
 しかし、本作ではちがう。「どんなつらい目にあっても生きていく、生きていることはいいことだ」と子どもをおかあさんがなんと死に神から取り戻してくるんだ。
 生きることの絶対肯定。どんなつらいことがあっても、生きてあることのまるごとの肯定。
 この改変はスゴイ。
 戦後の紙芝居運動を切り開いてきて稲庭さん(童心社創業者)の祈りの改変。
 中平さん、ありがとうございました。
 出会いに感謝。
 さあ、伸びていこう。

 

| 虫賀宗博 | ほっとニュース | 23:05 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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