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連載コラム「いまここを生きる」(第311回)血税

 現首相について、しばらく書かなかった。
 理由は直観ゆえ。内的声がするんだ。
 「もうこれ以上オマエが書かなくてもいい」「もっと他に書くひとがきっといるよ」「オマエにし書けないことを綴れ」という声だ。
 その声に従うつもり。これからも。
 ただ白井聡さんの『国体論――菊と星条旗』(集英社新書、2018年4月、以下本書とする)をおもしろく読んだので、現首相、そうして、いまの日本の土台について、いまは少し書く。例外として。
 いまの内閣は当然いずれ倒れる。絶対的な権力は、絶対的に倒れるという法則のとおりに。きっと自壊するんだ。
 ただ、戦後80年が生み出してきたいまの多層危機というものは、内閣の首をひとつ取り替えるぐらいで乗り越えられるものではない。
 本書の第一章の現天皇の2016年の「お言葉」ひとつを例に出しても明瞭にいまの危機を示している。
 現天皇は戦後民主主義の価値を守りたい。現首相はその価値(日本国憲法)のすべてを憎み、潰したい。その攻防戦。現天皇に現首相たちは「天皇は祈っているだけでよい」「天皇・皇后は改憲を邪魔するな」(本書P.17、19)と言い切った。現天皇の生きかた(全身全霊をもって傷ついた弱者の平安を祈るということ)を全否定。
 これはこれでひどい話。
 でも、天皇に守ってもらう民主主義って、いったい何か。天皇はオレたちの人生に不要と言い切るのが、民主主義じゃないの? 奇妙な話ではないか。
 戦後の本質は米国米軍の支配下の「天皇制民主主義」(本書P.130)。しかも、3.11の原発事故のときに露呈したように日本の実質は「民主主義でもない」のである。民衆がいくら望んでも、米国の許可なしには、原発ひとつ止められない。天皇制は戦前戦後一貫して継続され、しかも戦後は戦勝者の米国が主権者で、米国の利益を守るために天皇を使い「平和」し、「半民主主義(民主主義風、民主主義モドキ)」を与えられたのである。チョコレートのように天から降ってきたのである。しかも、「天皇を理解し敬意を持ったマッカーサー(米国)」という伽(とぎ)話を民衆は信じた。「鬼畜」呼ばわりしていたことは誤解だったと信じたのである。そうして結果的に戦死者を捨ててしまったのである。あるいは捨てることができると、信じたのである。ひとは信じたいことを信じる。
 その結果、「米国が我が国を愛してくれるから従属するのだ」(本書P.127〜128)という奇妙な盲従の「愛のドレイ」に戦後日本はなっていく――。
 長く書いてしまったけれども、この現実からどう抜け出していくのか。処方箋はあるのか。本書にはそれが書かれていない。でも、それが重要。処方箋を耕していくのが読み手の仕事。
 現政権は表層だ。表層だけでもこれだけのウミ。深層の実相はどれだけの根腐れか。
 まず病状をよく見ることだ。根気よく患部を洗い流すことだ。見つめれば、必ず知恵が湧く。
 まず金のこと。日本に金が余っているわけでない。在日米軍への負担額(いわゆる「思いやり予算」というドレイ予算)が86.4%にもなる(2015年度)。その血税を「ほんとうに必要なモノ」と「そうではないモノ」に区分し、後者については「血税を支出することをなるべく控えさせていただきたい」とか、くだくだと駄弁を弄し、サボタージュするドレイ作戦を繰り返すことだ。日本の官僚はみんな得意のはずだ。米国に対し、意識的にドレイである戦術を使い切ってほしい。
 そのためには自国民の人権を守る、利益を守るという思いが必須。「国益を守る」では全く不十分。「自国民の支払った血税を正当に運用する」というパブリック・サーヴァントの基本を思い出してもらえばいい。危機にこそ基本のキを思い出してほしい。
 戦死者のこと。私は都心の一等地のどこかを、国家予算をもって、買い、更地にする。その土地を何も置かない祈りの場所にする。右翼は右翼なりに祈ればいい。左翼は左翼なりい祈ればいい。どちらでもないひとはどちらでもないひとのように祈っていけばいい。あたかも敗戦を否認するかのように生き、戦死者を忘却し(あるいは靖国が奇妙に奪取か)、戦勝国のドレイになるのは、まず止めよう。孤立したドレイ国ではなく、近隣に友国を持つ、ゆかいに小さな日本をつくろう。そう思うのだ。
 6月2日(土)に沖縄の山城博治さんの話を聞いた(東山いきいき市民活動センターにて)。「あなたの現場で戦ってほしい。それが辺野古を助ける」と言われた。
 即座に「運動じゃない、生々と生きること、現場で生ききること」と思った。これは、本書への返答でもある。
(6月7日)

| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 06:20 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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