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連載コラム「いまここを生きる」(第315回)直訴(その2、完)

 幣原(しではら)喜重郎元首相(以下、元首相と呼ぶ)がマッカーサー連合軍司令官(以下、軍司令官と呼ぶ)に、1946年1月24日直訴したという話の続き。少し追補したい。
 9条が占領軍の軍司令官の「押しつけ」ではないことが、これで明白となった。まだ間に合う。「押しつけ」ではないこと、伝えあおう。
 もともと「押しつけ憲法」という言いまわしは好きにはなれない。
 占領軍がいたときに直接に文句を言わず黙っていて、占領軍がいなくなったから、急に声高に「9条の戦争放棄とはなんだ、日本が二度と欧米に立ち向かわせないように、いわば去勢されたのだ、もういちど去勢されない日本を取り戻そう」と主張。「押しつけられた」との70年に及ぶ連呼の繰り返しが一定の支持を受け、2020年の東京オリンピックの年に改正発議国民投票をしようか(どうしようか)という事態に至っている。
 占領軍が去った時点で、特別な国民投票を呼びかけ、「ワシらの憲法」として選び取っていく方法があったと思う。
すれば、9条がもっと、もっと日常化され、生活に生かされ、「押しつけ論」の蔓延を防げたはず。
 その国民投票運動の過程で、「ブッダやガンジーの実践に学ぼう」といった精神の運動も始まり、「9条を世界へ広げていこう」という展開もあったはず。
 現実は違う。
 元首相の秘密の直訴によって、戦争放棄と軍備全廃が成立したんだ。
 秘密交渉で9条が決まり、その後もさまざまな密約が日米で交わされ、天皇の頭越し外交によって沖縄が切り捨てられ、現実の戦後の体制は「与えられた半民主主義の」の状況が現在まで引き続いている。
 民衆国民はいつもいつも蚊帳の外。
 右派民族派も米軍・米国の半植民地であることの現状への批判が一切なく、星条旗を振りながらも相変わらず「押しつけ憲法」と、平和を侮蔑している。
 対話が成り立っていない。
 きわめて不幸な状況にますます突入している。
 「どうすればいいのか」と思いながらも、まださまざまな隙間があると感じられるので、動いてゆきたいと思っている。
元首相の直訴によって9条が成立したときのことを、軍司令官は後でこう証言している。
 「わたくしは、これを聞いて思わず立ち上がり、この老人(元首相のこと)と握手しながら、これこそ最大の建設的歩みの一つであると思うと言わないではいられなかったのであります。わたくしは、この老人を激励いたしました。そして、かれらは、あの規定(9条のこと)を書き込むことになったのであります。」(1951年5月、米国議会上院軍事・外交合同委員会の証言)
 当時、軍司令官は護民官のようにふるまっていた。実際、平和主義・主権在民(天皇は象徴)・基本的人権尊重を日本国民に与える振りをしており、人気は抜群。「拝啓 マッカーサー元帥様」と綴られた50万通の手紙がどーんと届いたのである(袖井林二郎さん『拝啓マッカーサー元帥様』岩波現代文庫)。
 軍司令官は単に軍人。米国の利益のために動いているだけなのに。50万通の手紙は、ある種のラブレター。ちょっと無気味。
 9条があるのに、朝鮮戦争が始まったら、「日本に再軍備を」と命令するし、中国人民軍が乱入し参戦してきたら、原爆使用を言いはじめ、解任。離日。
 そのとき、「名誉日本国民」にしよう、でっかい銅像を建てよう、「マッカーサー神社」を建立しようという話が出る。盛り上がる。秩父宮や朝日、毎日新聞社社長が発起人に名を連ね、募金を始めようとしたとき、軍司令官が「日本人は12歳」なんていう自説を開陳したのである。(前掲の1951年5月の米国議会証言)。
 バカにされ、カッとなったワシらの先輩。「マッカーサー神社」の話は、一場の夢と化す。一方的な愛を送っていたことへの恥ずかしさ、情けなさ。これも、実にあわれで無気味。
 敗戦のわが身を省みることなく、占領の現実の権力構造にあまりにもやすやすと身を寄せてしまうこと。東京大空襲をやったルメイ空軍大将にまで勲章を渡すワシらの国のこと。わが煩悩を活性化させる問題。なんとかならぬか、うーん。
(7月5日)

| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 13:43 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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