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連載コラム「いまここを生きる」(第321回)独裁を倒すために

 山本博之さん(ジャーナリスト)の『倒せ独裁!――アウンサンスーチー政権をつくった若者たち』(梨の木舎、2016年10月、以下本書とする)を読んだ。
 山本さんには2006年に出会った。プラユキ・ナラテボーさん(僧侶)の講座のとき、山本さん、参加してくれた。
 当時の山本さん、朝日新聞の大阪企画報道室記者。本書によると、その前はバンコクのアジア総局にいて、ビルマの民主化闘争に心を寄せていたことを初めて知る。
 その山本さん、2010年に退社。帰りなんいざ、と鳥取へ帰る。
 久しぶりに手紙を出したら、本書が2018年7月に送られてきた。
 心を打つ「暑中見舞い」。炎暑が続く今夏、「本書はひょっとして日本について書いているのではないか」「曰く『倒せ、日本の独裁!』なんだ」と思って、心して読んだ。汗かきながら、読んだ。
 本書はていねいに入獄した若いビルマのひとたちの姿を追っている。獄中にちっちゃな穴を掘って図書館までつくっている。ビルマの獄では読み書き厳禁。それは本書で繰り返し登場する発言、つまり「囚人の知性を抹殺したいからだ」。獄中で「読み、学ぶことは、独裁への抵抗になるんだ」(本書P.123)。
 知性とは要するに自由な批評精神のこと。ほんの少しでも批判し、吟味し、笑いや怒りが民衆の中から生まれることを独裁者は恐怖する。
 どの独裁者も力の源泉は、民衆ひとりひとりの支持服従。ひとりの「なんじゃ、王様は裸やん」というひと声によって、堅固な体制も崩壊しはじめることはあるんだ。ゆえに独裁者はどんな小さなことでも弾圧。それだけ民衆の「アホか」といういのちの声を恐怖している。
 独裁者たるもの、民衆のひとりひとりの知性を小さいときから奪う。学校においても、教師に質問することは許されず、各教科(とくに歴史)は徹底して「暗記もん」にさせられ、テストにテスト。上意下達の精神構造が培われていくことになる。ドレイにさせられる。
 ビルマではそうだったし、日本では全くいまもそうである。だから、日本の学校をほんの少しでも改革して、風通しをよくしていくこと、そういう非暴力的介入を成功させていくのが、民主主義の道を開く。そう思いながら、本書を読んだ。
 本書によって、ジーン・シャープの『独裁体制から民主主義へ』(ちくま学芸文庫、2012年)を知り、読んだ。すっきりとしておもしろい。
 ビルマの民主化闘争の中で生まれた『独裁体制から民主主義へ』。それがウォール・ストリートを占拠し、「アラブの春」を生んでいったひとたちの教科書になっていたのも、よくわかるシンプルな書。
 非暴力行動198の方法が明示してあるので、ぜひ見てほしい。日本の場合、小学校中学校でやれることが山ほどあるだろう。
 やれば、できる。動けば、動くんだ。希望はその動きから生まれる。
 最後に本書のティンウーへの山本さんのインタヴューが秀逸。座右の書のアウンサウンスーチー『希望の声』とともに、私自身の法(ダンマ)となっている。
 山本さん、ご縁に感謝。「若者は国の頭。国の心臓だ。若者が動けば、国は変わる」(本書P.250)。
(8月16日)

 

| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 12:20 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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