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連載コラム「いまここを生きる」(第322回)水風呂のおばあちゃん

 2018年の夏が行く。やっとこさ、日中の気温が30度を切り始めたね。
 「クーラーがほしい」と生まれて初めて思った夏だった。
 電気屋を覗(のぞ)いて、築100年の家にどうやって設置するのか――と具体的に動いたわけでない。
 ただ「クーラーがあれば、この息苦しさが消えるかも」と思っただけ。
 ただでさえ暑苦しい京都盆地。その北奥の岩倉盆地。
 三方が山に囲まれた盆地。風も吹き通りにくく、炎暑が籠(こも)る。前日の猛暑が逃げずに、翌日に追加されていく。それが40日間も繰り返された。
 午前10時から午後4時まで、無風の酷暑が蝉時雨とともにピークに達する。
 何もできない。
 深呼吸するか、おもしろい本を読みつづけるか、しかない。
 私、8月7日生まれ。さんざん汗をかいて成長した。汗腺も開いている(ひとの何倍も汗をかく)。
 でも、その暑さは、せいぜい33、34度まで。いまの40度の夏は知らない。
 大急ぎで「地球高温化対策」の手を打っていくしかないと思う(これ、何度も書いたね)。ふつうのひとたちが気づいて、ふつうに行動することによって、やっと実現すること――。
 でも、きょうは、あえて書かない。
 いまここの暑さを忘れられるような絵本について書く。
 行く夏を感じながら。
 『天女銭湯』(ペク・ヒナ、訳は長谷川義史、ブロンズ新社、2016年8月)。
 原題はThe Bath Fairy。風呂の妖精。
 作者は韓国のアニメーションの作り手。
 主人公たちを紙粘土で作り、それらを写真仕立てにしている絵本。
 人形がおもしろい。炎暑酷暑すら忘れそう。
 ひとびとの表情の瞬間が切りとられているんだけど、その人物の特徴をほんの少し誇張する(カリカチュア)。その誇張のしかたで、小さな波を起こす。その波は笑い。ほほえみ。ものまねの笑いといっしょだね。
 人形の存在によって、クスクスとほほえみがら、主人公ドッチとともにソウルの下町の銭湯の水風呂に入ることができる気がする。山行中に岩間の湧き水をいただくような気分。
 水風呂って、好き? 水風呂に漬かること、できる?
 私はいまでもニガテ。3、4分かけて、ゆっくりしずかに漬かることが20年前にやっとできるようになった。多くのひとたちはサウナから出たとたん、水風呂にいきなりザバンと漬かっている。心臓によくないと思うけど。
 『天女銭湯』のドッチは水風呂が好きで、ザバーンと漬かるタイプのよう。
 で、いつものように水風呂に漬かっていると、あるばあちゃんがいる。誰だ!? 年寄りの妖精、元天女。羽衣をなくして、銭湯にいるしかないんだって。おもしろい。
 ばあちゃん、水風呂遊びのプロ。いっしょに遊んでもらって、ドッチ、めちゃ楽しい。でもやりすぎて、その夜、風邪をひく。
 元天女がすうっと現れて、寝ているドッチの顔に手を当て、「はよう はよう ようなりよし」(なぜか訳は大阪弁)。その手は冷たい。水風呂のプロだから。「ひえー……ちめたい。」翌朝、ドッチ、全快。
 「ありがとう天女のおあばちゃん!」
(8月23日)

| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 03:57 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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