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連載コラム「いまここを生きる」(第325回)角栄とキッシンジャー

 じっくりと読みたい本は書店で求め、赤線を引いている。さあっと眺め、読んで、好奇心を満たしたいと思う本や絵本は地域の図書館にリクエストして、市内各図書館から取り寄せてもらっている。
 以下の本は、後者。
 奥山俊弘(朝日新聞記者)の『秘密解除 ロッキード事件——田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年、以下本書とし、それぞれ敬称も略する)である。
 たしかに CIAから日本の政党への資金提供に児玉誉士夫が絡む——とか本書には書かれている。
 でも、そんなことは私も他のひとびともすでに知っている。もっともっと児玉誉士夫のドロドロ情報の「秘密解除」があるのか、と思った。なかった。
 公文書秘密解除の本、私も読んできた。有馬哲夫『日本テレビとCIA——発掘された『正力ファイル」』(新潮社)、春名幹男『秘密のファイル——CIAの対日工作』(新潮文庫)とかを繙(ひもと)けば、米軍・CIAの絡みかたのすさまじさはすでに伝わっている。
 本書には、それ以上はなかった。米国政府も解除できない情報はいっぱいあるのだ。
 きわだって本書がおもしろいのは、米国のキッシンジャーがすさまじく田中角栄を嫌っていたことだ。
 キッシンジャーはあるひとに「気が狂った日本のお客さんがまた一線を越えたぞ」と言っている(本書P.34)。「気が狂った」田中角栄とはスゴイ。
 「日本の定見のない豹変の可能性」(本書P.33)をキッシンジャーは口をきわめて厳しく指摘しているのにも驚く。
 「日本人は国際社会をむしばむ可能性がある。たとえばエネルギー。彼らは腐肉を食らう動物だ。狭量で、冷血だ」「国際構造が彼ら(日本人)にとって好ましければ、彼らは米国にとってOKだ。好ましくなければ、彼らは転向する」(本書P.32)。
 田中角栄が首脳会談の内容を無断でリーク(漏らす)ということから始まったキッシンジャーの怒り。嫌悪。田中の出自(馬の売買をしていた父、小学校卒のたたきあげ)、腐敗汚職の闇オーラというものを、初期のころ(総裁候補の名のりをあげたころ)から軽蔑嫌悪したにちがいない。
 でも、程度の差こそあれ、ニクソンやキッシンジャーの内部にも同質同量の資質があるではないか。だからこそ反発したのではないか。
 ニクソンは後にウォーターゲート事件を起こす。田中角栄もロッキード事件を起こす。それぞれ辞任。同じ道を歩むのは、磁石のNとN。SとS。
 米国は米国で、歴史上空前のすさまじい帝国主義国家。77年前に日本と戦う以上、「無条件降伏しかない」(『トルーマン回顧録』恒文社)との方針。原爆まで落として、その方針を貫徹。日本を無条件降伏させた後は、天皇以下を支配下に置き、軍事外交司法のポイントを押え、間接植民地(沖縄のみは直接に支配)。
 日本は日本で、これまたすさまじい帝国主義国家。ただし、後発の、はりぼて国家。その内実は劣等感。欧米に片思いの劣等感。内に威張っているわりには、外にはひたすら平身低頭。
 戦後米国に日本は平身低頭を続ける。軽武装ゼニもうけ主義で吉田茂、岸信介、佐藤栄作とやってきた。朝鮮・ベトナム戦争という不幸でもうけてきた。
 そうは書いても、現実にはすさまじいことだらけ、ゆがみの連続で、その総矛盾が一気に突出したのが田中角栄内閣。米国との関係のゆがみも、下水が水道の蛇口から出るように突出。その繕いから右傾化へ向かっていくね。その後。
 田中角栄も、キッシンジャーも、自己愛型のニヒリスト。「世界に意味というものはないけど、私だけは好き」というパターン。
 世界の否定から、全肯定へ向かうひとはいないのか。
(9月13日)

| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 10:26 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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