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連載コラム「いまここを生きる」(第329回)性、いのちの根

 絵本の『花ばぁば』(ころから、2018年4月、以下本書とするね)を読んだ。
 何度も何度も本書を繰り返し眺め、味わった。
 書き手+描き手、クォン・ユンドク(権倫徳)さん。
 地味深い文と絵を紡いでいる。
 とにかく絵がいい。紅色も雲色も空色も、灰色がどこかに隠されている。いまここに在るのに、古(いにしえ)へ古へ遡っていくような絵。仏画のようでもある。
 あるいは、土の画のようである。土は過去のすべての動植物の死の総体。土が現在明日のいのちを育む。そんな土のような、地味の深い絵。祈りの絵。
 本書は日本軍「従軍慰安婦」と言われる戦時性奴隷にされた女性を中心に据えている。
 朝日新聞社のミスもあり、現首相たちの勢力が、その女性たちを「商売女たち、金もらって体売ってるんだ」と盛んに蔑んでいる。ヘイト(憎悪)している。
 本書(リクエストして右京中央図書館にあったのを借りた。今度あまりにも良いので書店で求めてみよう)の中央部のページもなぜか切り破られ、テープで補強されている。単純ミスのような破りかたではない。
 こんなことで、ヘイトスピーチをしているひとたちが言う日本国の名誉が守られるのか。心配である。
 黄土色と空(から)っぽの服。これが本書の底力を際立たせ、おもしろいのである。
 旧日本軍の男どもの肉体はあえて描かない。黄土色の軍服やくるくる回るかのように描く紐によって、象徴。
 すべてが空っぽの服のままの日本兵。あえて非在の存在感。
 日本兵。縁あって日本の男として生まれ、臣民教育を学校で受け、軍隊に入れられ、上官による私的制裁(暴行リンチ)と厳しい監視、激しい戦闘の日々。休暇もなく、食料の補給すら、ほとんどない。人権も人格もない。
 開発独裁国(当時)の日本の帝国主義侵略の日常が、空っぽの黄土色の軍服によって浮遊してしまっている。加害性まで浮遊してしまっている。
 いまだに空っぽの軍服のままに浮遊しながら、奇怪な発言を繰り返し、セカンド・レイプ、サード・レイプ。エターナル・レイプを繰り返すのか。
 謝(あやま)るって何か。ひとのために謝るのではない。自分自身のために謝るんだ。自らの内部の何か(正義とか、やさしさとか)に気づいて、それを回復して生きてゆきたいから、「悪かった」「ごめんな」という言葉が出てくるのだ。
 南京大虐殺のとき、2人の日本兵が「どっちが早く100人切ることができるか」と競走があった。それが50人か60人か切った(これだけでもスゴイ)ところで、軍刀の刃がかけた。で、この百人切り競走が終わってしまった。だから、百人切りはウソだった。ゆえに、「南京大虐殺の全体だって、伝聞だらけで、事実かどうかもわからん。ウソだ」という論があった。いまもその妄論を信じているひとがいる。
 「100のうち、1か2かがウソだったら、100のすべてがウソでいいかげんなもん」という論理だ。
 軍性奴隷の女性たちの証言もそうだ。時計もカレンダーも地図も手帳もない場所で発生したことの部分が不正確だからと言って、その全体が、すべてがウソと言えるのか。
 たとえば、1年前、1か月前の夕食のメニューを覚えているひとがいったい何人いるのか。
 軍の公文書は焼却されて、ない。あったとしても決して公開しない。そういう国家権力に対して、オモニたちは素手で立ち向かっている。その権力を、いまだに女性を差別し、朝鮮人中国人を侮蔑しているようなひとたちが支えている。
 オモニの記憶の証言が唯一の証拠なんだ。
 その言葉を全身で聞いていく以外にないではないか。現場に立って全身全霊で聞けば、わかることではないか。
 性はいのちの深い根。あたたかいいのちの源泉。
 その性をぼろぼろにして敵対する民族を抹殺しようとしたのか。辱めを与えて敵の士気を下げようとしたのか。軍人の欲求を満たしただけなのか。
 なんでいのちの根をもっと深めないんだろう。
 戦争があると必ず性暴力が発生する。日本国は全身で立ち向かわないと、また同じことを繰り返すことになる。
 してほしくない。
(10月11日)

| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 07:24 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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