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連載コラム「いまここを生きる」(第333回)ウラヤマ(その5)

 ウラヤマの5回目。
 ヒマラヤへ行って逍遥することなく、ずうっとウラヤマをただ徘徊してきたな——。
 そう思って、気づき、始めるウラヤマ紀行の5回目。
 10月の終わりの休日に、比良山系へひさしぶりに行ってみた。「リトル比良」と呼ばれているコース。ちょうど2年前に明子と途中まで登ったところ。
 初めにひとこと。行ってみて、びっくり。いま、京都や滋賀の山の倒木が凄まじいことを伝えておきたい。2か月前の台風21号の40メートルの暴風の爪痕だ。50年間の私の山行史の中でも、こんな倒木は初めて。どの地点からも何十本、何百本という倒木が見えている。
 登山道に覆いかぶさった倒木の多くは山岳会のひとたちによって切断され、整備されていた。でも、きっと全登山道はまだ整備しきれていないだろう。今後の山行、気をつけないといけないね。
 比良山系の琵琶湖側の花崗岩の山塊は長い、長ーい崩壊期の途中のいま。弱くて、脆い。いわば、ボロボロ、ポロポロ。痩せた、その地に必死に生えた赤松、杉が次々と倒されている。
 しかし、赤松たちは摂理をよく知っている。倒木にはキノコがこれから生えて分解され、さまざまな種子が倒木から育っていく(倒木更新)。倒されても立ち上がっていく生命力を示現してくれる——。
 話を戻す。JR湖西線の近江高島駅を下車し、8時に歩き始める。
 赤トンボの集団が集合しあっている。赤トンボといっしょに登る。肩や頭に盛んに止まってくれる。ゆかいにエネルギーをいただく。
 登り上がると、白坂あたりから琵琶湖が見渡せる。遠く伊吹山や鈴鹿山脈もはっきり見える。
 気持ちがいい。雲ひとつない。秋晴れ。日の暖かみが体に気持ちよく差してくれる。
 山の中でしばしば日向(ひなた)ぼっこをする。
 山行しているひとが他にいないので、花崗岩が露頭しているところで(山道なんだけど)、のんびりと実際に目をつむってみる。小田川の上流の小さな滝が落ちる音が聞こえてくる。
 しずかな時。2、3分、ほんとうに眠る。
 しあわせな、充足のめざめ。
 これは、実にいいコース。
 なんでいままで知らなかったのか。
 リトル比良の最高峰の鳥越峰(702メートル)だ。頂上らしさも何もない。ただ「鳥が越えていく」だけの峰。しずかな峰がいい。
 その峰の手前のオウム岩がすばらしい。
 30メートルの巨岩の花崗岩。独立し、屹立している。
 比良山系の武奈ヶ岳、釣瓶岳、蛇谷ヶ峰がはっきり見える。赤坂山など若狭との県境の山脈も見える。琵琶湖の北部はもちろん伊吹山の北の金糞岳もくっきり見える。つまり270度の展望が可能となる岩である。
 鳥のオウムのような形の岩とも思ったけど、世界の始まりの響きの名の「オーム」であろうと思った。
 その名を奪取した宗教団体があった。主唱者をはじめ何人ものひとびとが大逆事件のように死刑にあった。あのひとたちの動き、すべて雲の下のこと。雲の上の青空ではなかった。死刑になったあのひとたちへも殺されたひとたちへも、ナムアミダブツと口に出して、しばらくいた。他に山行者がいなかったし。
 こんな岩は他にないかもしれない。
 ひそかに私の「風の岩」と名づけた。
 土、木、草、石、岩からエネルギーをいただいて、寒風峠からオトシ湿地へ下り、楊梅滝を眺め、北小松駅へ下りた。
(11月8日)

 

| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 09:25 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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