論楽社ほっとニュース

京都・岩倉の論楽社からお届けします
<< 連載コラム「いまここを生きる」(第335回)明日が見える | main | 戦争をやれば、ひとが壊れる――三室勇さんの11月例会レポート >>
連載コラム「いまここを生きる」(第336回)沈黙を聞く

 あんなにもおしゃべりだったのに。
 最近はしゃべらないことも好きになってきている。
 ちょっと考えればあたりまえのことだけど、沈黙を母体にして、詩や音楽……という子どもが生まれているんだと思うようになってきている。
 沈黙に耳をすましていると、「子ども」の声が聞こえてくる。
 そんな1か月の、小さな日録――。

 

  11月5日(月)
 松本剛一さんの招待によって、金徳洙(キム・ドクス)の韓国の打楽器ライブを楽しむ。明子もいっしょ(京都のライブハウスの磔磔にて)。
 チャンゴ。ケンガリ。チン。プク。これら4つの伝統打楽器が醸す音の波、波、波。それらが音の河になって、音の滝となっている。
 音の波は、ひととひととを結びつけている。死んでいったひととも、これから生まれてくるひととも、結びつけようとしている。自らの沈黙につながっていく。体や心が躍動しながらも、妙に静かに落ち着いていく。

 

  11月19日(金)
 レオ・レオニの『フレデリック』(好学社、訳・谷川俊太郎)を読む。
 とりいしん平さんから教えてもらった絵本。
 他のネズミが冬に備えて、せっせと働いているのに、フレデリックだけは「おひさまのひかりをあつめてるんだ」「いろをあつめてるのさ」「ことばをあつめてるんだ」。
 冬が来た。蓄えた木の実が減っていって、藁(わら)もなくなったとき、他のネズミはフレデリックを見つめる。
 フレデリックは冬の夜に春の光を、色を、言葉を奏でて見せる。光、色、言葉によって、他のネズミたちの心を養う。フレデリックは詩人。役者、芸者、易者。そうしてもっと向こうへ続く道があることを示す。

 

  11月18日(日)
 深夜0時からラグビーを見る。日本対イングランドのテストマッチ(対等な国どうしの試合)。ロンドンのトゥイッケナム競技場に8万人が見つめる。その8万人を前半は沈黙させてしまう日本のプレー。FW(フォワード)にリーチマイケル、BK(バックス)の福岡堅樹がよかった。
 何がよかったのか。勇気だ。本番の試合でなかなか湧かないのが勇気。頼るべきものがなにもないフィールドに防具ひとつ付けずに、フェファプレーに徹しながら、ぶつかりあう。自らの内部に紡ぐ勇気という気を唯一の頼みとして戦う。それがラグビー。代表チームであろうが、私が体験したクラブチーム(草ラグビー)であろうが、それがラグビー。
 日本代表、よくやったと思う。

 

  11月22日(木)
 岩倉川沿いのクヌギ、ケヤキが葉を紅(あか)く染ながら、風に散っている。冬の雲がやっと来た。
 急に時雨始めたと思ったら、こんどは急に晴れている。日が差してくる。めまぐるしく変わる空。
 あっ、虹だ。
 虹が空に大きくかかっている。
 以前から響いていた音。そう、人類がこの世界にやってくる以前に響かせていた音を虹が鳴らしている。そんな気がする天空。

 

  11月23日(金)
 木枯らしが吹き始める。
 昨年より23日も遅い。高温(温暖)化の日本列島にも、やっと木枯らしが吹き、私はあわててセーターを着る。
 中村哲さんから、「アフガニスタンのかんばつがますますの悪化」の週報(2018年10月15日受信報)が入る。「最後まで実質を重んじて力を尽くし、一人でも多くの村民が生きながらえるよう祈ります。終末の時こそ、いっそうの力を尽くしたいと思います」とある。
 哲さんの「終末の時こそ」の決意。耳をすませれば、決意の声が聞こえる。
(11月29日)

| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 06:04 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









http://blog.rongakusha.com/trackback/879007
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< December 2018 >>

このページの先頭へ