論楽社ほっとニュース

京都・岩倉の論楽社からお届けします
<< 仏教以前のことから――中嶌哲演さんの「講座」へ、ようこそ、ようこそ(その2) | main | 連載コラム「いまここを生きる」(第339回)器量――友人が教えてくれた本(その3、完結) >>
力の矢を抜く――友人が教えてくれた本(その2)

 前回のコラムで、わかりにくいところがある、との指摘を受けた。
 追加の説明を試みてみる。
 「近代日本は宗教国家」「しかも国民がスピリチュアル・アビュース(霊的な虐待)されている」というところである——。
 まず、戦前の日本の75年間。
 天皇は「神の子孫」とされ、国民は「天皇の赤子(せきし)とされた」。この定義がそもそもおかしい。ウソ、ニセの宗教ではないか。
 普通宗教にはなりえない。日本という地域限定の国家神道教だ。しかも虚偽。
 教会に相当するのが学校と軍隊。そこで広告宣伝。そのウソ、ニセ宗教の教義を何十億回唱えあわせ(これがスピリチュアル・アビュースだ)、信じ込ませ、ワシらの先輩先祖の頭と心を壊した。スピリチュアル・アビュースの結果である。
 次には戦後の75年。天皇制の呪縛は温存されているけど、その天皇の上に米国がどかーんと座しているから、相対的に天皇の呪縛が小さくなっており、構造の全体が見えにくくなっている。けど、呪縛の総体はダブル。ぶ厚くなっている。
 米軍に対して「思いやり予算」と言ってみたり、原発事故に対して「ともだち作戦」って言ってみたりして、奇妙な用語が使われていること、変だと思わないか。
 人間の情の言葉じゃないか。軍に愛の言語なんておかしくないか。
 もういちど言う。天皇制って、「日本全体が家族だ」という妄想に基づいた宗教だったよね(これ、一君万民思想のこと)。この妄想を米軍にまで及ぼしているんだ。そうして、これを変だとは思わないんだ。
 米国は国家利益のために米国のために米軍を日本列島に置いているだけ。山のような密約が一切知らされないゆえに、天皇制宗教のもと、あたかも「米国は日本のために、日本を守るためにいてくださっている」かのように思い込んでいるのではないか。おかしくないか。
 米軍のために日本の領土を差し上げて軍事基地をつくり上げることが唯一の解決法だ——なんて。そんな「唯一」なんて言いかたも変だ。そうして反対運動へのスピリチュアル・アビュースを行う。無権利状態に置いてしまう。
 以上のさまざまな事象から天皇教信心ははっきりと残存している。生き残っている。そう、私は考えている。
 天皇教の教会は、いまだに学校と(戦後は軍隊ではなく)テレビを中心としたマスコミ。お上の言うことに盲進する信者をつくっている。
 以上である——。

 

 さてさて、前回から続き、本との出会いだ。
 きょうは、楢木祐司さん。Cを送ってもらい、Dを教えてくれた。
 C.『2011年のあの時・いま・未来を知る 図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』(みんなのデータサイト出版、2500円、福島県飯坂町一本松11–7 ふくしま30年プロジェクト気付 https://minnanods.net/ —–地域の図書館にリクエストし、かつ購入をすすめてほしいね)。
 市民の手によって集められた放射能のデータの記録である。3年半をかけ、17都県の3400か所のポイントで測定された。
 まずページをどこでもいいから自在に繰ってみよう。何人かの友人・家族とともに読むのがいい。
 たとえば、東京。プルーム(放射能が濃厚な雲)が2011年3月15日に2回、3月21日に1回来ている。通過している。東京の東部は福島の会津と同じレベルの汚染が観測されている。
 たとえば、千葉。同じくプルームが3月14日夜〜15日未明に、3月21日夜〜22日未明に流れて来ている。千葉の北西部も会津と同じ汚染レベルだ。
 知っていた。でも、ここまでとは、驚く。東京オリンピック、やめたほうがいい。
 群馬、栃木、茨城、神奈川も同じように大変なことが本書から伝わってくる。
 それぞれに私は驚く。
 食べ物について、具体的にキノコ、山菜、海水・淡水魚、米、牛乳、野菜と各都県で表記してある。「食べてはいけない」「食べないほうがいい」が明記されている。
 これ以上のヒバクを避け、なんとか生きて、生きのびてください——という思いが満ちている。
 本書がアフター・フクシマの姿だ。実相だ。
 現在もなお毎時9万ベクレルもの放射性物質が壊れたままの原子炉から空に向かって放出され、海にもぼう大に流れ出ている。
 こういう現実を前に、ほんの少しでも前へ、前へ歩み出す意思を本書から感じる。
 D.ドリアン助川『線量計と奥の細道』(幻戯書房、2018年)。図書館にリクエストして、読んだ。
 3.11の半年後にドリアン助川さんは自転車(鉄道も車も途中あり)で芭蕉の旅を追体験している。「日光東照宮 杉のそば 0.33マイクロシーベルト」と線量計で計測しながら、旅をしていく。
 本書もCと同じように、「原発事故を忘却させない」「厳しい現実を1ミリ1センチでもほんの少しでも前へ前へ立ち向かって進めるんだ」と精神の運動がある。この本も知ってよかった。
 原子力(であろうが米軍であろうが)は「国民すべてのイーブンな関係の上に成り立っているわけでない。誘致。反対運動。人々を飲みこむ補償額。二分される住民。一人一人の不安。自治体と電力会社の軋轢。政府からの圧力。そのひとつひとつが絡み合うとてつもない渾沌を、強き者から弱き者への力の矢が突き刺している」(本書P.235)。
 そのとおりだ。だからこそ、「このままで殺されてたまるか」「黙らされてたまるか」という声がC、Dから聞こえる。
 楢木さん、ありがとう。力の矢を抜く作業本だね。
(12月13日)

| 虫賀宗博 | いまここを生きる | 10:47 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









http://blog.rongakusha.com/trackback/879012
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2019 >>

このページの先頭へ