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生きていくことが抵抗――とりいしん平さん8月例会レポート

 遅くなったけども、8月3日(土)のとりいしん平さんの8月例会をレポートする。
 その日は、アーサー・ビナードさん(以下、アーサーとし、敬称を略する)の特集になったね。
 アーサーの新作の紙芝居の『ちっちゃい こえ』(童心社、2019年5月)を8月3日には上演してほしい――としん平さんには前もってお願いしていたけど。
 紙芝居は日本の文化の流れの中でオリジナルに生まれた。紙をいちまい一枚抜いて、物語を目の前にいる聞き手の反応共感とともに作り上げていく。心をともに開いていく。演じ手の力量が必要な、小さな芝居、ミニ演劇。
 丸木位里さん+俊さんの「原爆の図」の絵がまずあって、それらを再構成し、新しい放射能汚染物語をアーサーは再構築していく。再創造していく。
 紙芝居に登場する猫も鳩も犬もじいちゃんもねえさんもあかんぼうも、そうしてちっちゃいサイボウも、そのすべてが「原爆の図」のどこかにすでにある。それらを借景にし、ワシらのすべてがそこから避難逃亡することができない放射能汚染物語にしていくのである。
 引用してみる。地域の図書館にリクエストして、上演していってほしい。

「ハトは爆弾をおとさない。ネコも爆弾をおとさない。いきものはみんなおとさない。
ニンゲンだけだな、爆弾をつくっておとすのは。
どうしてだろう?
ニンゲンのからだだって、ネコやハトとみんなおんなじ、みんなサイボウでできているんのに……。」
「原子爆弾は あたらしい ころしかた。
じりじり じりじり
あとから あとから ころされる。
サイボウをこわすものが そらからふって、つちにもぐって、からだのなかまでもぐりこむ。
たすかっても、つぎの日 つぎの日。
じりじり じりじり じりじり ……。」

 底なしに惨(むご)いピカドンに、ゲンパツ。
 その惨さを、アーサーは「じりじり」というオノマトペ(声喩、擬音語)で表出。
 いまここでも「じりじり」。
 しん平さんは、歌うように、かつ淡々と静かに演じた。
 「じりじり」の日常を演じた。
 「よかった」と思う。
 いつか米国各地でも「じりじり」と上演されていってほしい。
 だって、いまだに多くの米国人は「ピカドンが戦争を終わらせた」という米国政府の言説を信じているからだ。ソ連参戦によって、終戦に至ったことは天皇の御前会議で明白に記録されている。
 ピカドンによっても「ダメだ」と考えなかったのである(これはこれで、もうひとつの惨さがある)。
 ピカドンによって地球を支配しようと思っているグループのひとたちにとって、米国人や米兵、日本人なんかどうでもいい存在。
 その日本人画家のピカドンの絵を使って、ひとりの米国人詩人が「じりじり」とクロスカウンターの言葉を発語し、「じりじり」とヤツらを追いつめていくこと。これがひとつの希望である。
 しん平さん、峠三吉の「序」を歌ったね。「にんげんをかえせ」である。
 生きもののすべてを崩壊させ、日本語すら「ヒバクさせた」(峠三吉『原爆詩集』岩波文庫の「解説」から引用、このアーサーの「解説」、目が開かれる)。
 生きたもののすべてを生きながらにして「生きた 墓標」(峠三吉)にしていく原子力マフィアのヤツら。いったん得た利権と凄まじい権力をを1000年も続かせようとしているヤツら。
 ヤツらに心を、魂を、私自身を売ってはいかん。
 押しつぶされるように、陽気に暮らしていかなきゃならん。
 しん平さんが8月3日に歌ったように、ちょっと切なく、静かに歌いながら、生きていかねばならん。
 生きていくこと自体がヤツらへの抵抗であり、自らの未来の再創造なんだ。
 しん平さん、ありがとう。あなたは、根っこを暖めるひとだね。ありがとう、しん平さん。

ちちをかえせ ははをかえせ
としよりをかえせ
こどもをかえせ
わたしをかえせ わたしにつながる
にんげんをかえせ
にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをかえせ

 人間の世のあるかぎり、崩れぬ平和をつくっていこう。そう思う8月例会。
 クーラーのない論楽社、暑かった。とりいしん平さん、遠くから来てくれた参加者、助けてくれる明子、みんな、ありがとうございました。一期一会に、感謝。

| 虫賀宗博 | ほっとニュース | 22:48 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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