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連載コラム「いまここを味わう」(第13回)架空の話――本土決戦と『邪宗門』

 本土決戦のことである。
 40年も50年も前から、なんとなくだけれども、「本土決戦がもしもあったら、どうなっていただろうか」と、たびたび思ってしまうのである。
 本屋で何気なく、ある薄い文庫を手にし、パラパラと見ていた。
 「本土決戦の全貌を解く」なんて、あるので、買ってみた。
 「全貌を解く」ことはできなかった。
 内容はページ数と同じように薄い。これでは説明解説でしかない。
 オススメはできないね。
 何という本か。
 『少年ゲリラ兵の告白――陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』(新潮文庫、2019年8月、以下本書とする)である。
 筆者はNHKスペシャル取材班。
 本文中に何回も「辺野古への『移設』」と書いている。軍港がプラスされた、凄まじい巨大軍事基地が新しくつくられようとされている事実を、なんでNHKは隠し、伝えないんだろうか。
 軍事の問題をめぐって報道するときに、事実をきちんと伝えずして、何を伝えたいのであろうか。
 戦(いくさ)において、そのひと(ひとびと)の本質が露(あらわ)になる。
 軍はひとをすべて道具として使う。どの国家でもすべてそうだ。
 しかし、こと日本軍において、どうしてひとのいのちをかくも粗末に処するのであろうか。なぜ人間存在をここまでも侮辱できるんだろうか。
 「一死必砕ノ特攻ニ依ル肉迫攻撃ヲ主体トス」(本書P.180、図書館で見てね)――。
 よくもこんなこと、書けるね。
 米軍が実際に計画していた作戦によると、南九州(オリンピック作戦)、関東(コロネット作戦)の2か所から上陸。その作戦名が「ダウンフォール(滅亡)作戦」。作戦名、妙に軽いけどねえ。
 日本人のすべてを「敵」とする、凄まじい焦土絶滅の戦(いくさ)が行われたであろう。
 片や、日本は特攻肉弾戦のみ。子どもも女性も老人たちもすべての日本人による「特攻の全体化」。
 きっと特攻に失敗することは許されず、ケガをしたりしたら、日本軍によって背後から撃ち殺されていく。すべて命令下に使い捨てられていく。
 米軍による焦土作戦。日本軍による玉砕(自爆滅亡)作戦。
 その両者によって、きっと凄まじい死者が生まれていく。2人に1人が殺されるかもしれない。
 おそらく、きっと、私も、あなたも、この世に来ることもなかったかもしれないほどの死者の山が築き上げられたことであろう。
 そこまで痛めつけられたとき、ひとは何に気づくか。
 虚構は虚構である。虚仮(こけ)は虚仮である。天皇制も軍国主義も、実体が何であるのか、内実がなんであるのか、そのことに気づくのか。あるいは、何も気づかないのか。
 私は思い出す。45年前に下宿で読んでいた高橋和巳の『邪宗門』(新潮文庫)だ。おもしろいフィクション。
 戦前に不敬罪を口実に弾圧を受けた、ある架空の宗教団体が戦後の民主改革をより深く実現させるために占領(米)軍と政府に向かい、捨身の蜂起をしていくのである――。
 私はこういうフィクションをSFでもいいので、もっともっと書いてほしいし、語っていきたい。
 「ありうべき戦後」である。理念の対話をいまからでも小さく深めたい。遅くはない。もっと、もっと、「来たるべき戦後」を話そう。70年遅れた、80年遅れた再出発だ。もうひとつの「青空のような戦後」を語ろう。
 「日本会議」に負けるわけにはいかんのではないか。
(9月26日)

| 虫賀宗博 | いまここを味わう | 13:02 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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