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連載コラム「いまここを味わう」(第15回)その絵は歌

 そのひとは大学生になってもなおホームスクール(家庭学校)に来てくれている。
 週に1回のペースで4年間、本を読み、対話してきた。
 もう10月になり、そろそろ総決算の本をともに選ばなければならない。高校時代から7年間のホームスクール生活のシメの本を決めなきゃ。
 なお、そのひと、ホームスクール卒業にあたって「卒論のようなエッセイを、書くのがあまり好きでないのでパス」「その代わりに歌をうたう」と言っている。
 それ、とってもおもしろい。
 歌はいい。
 さて、どんな本がいいか。けっこう真剣に、かつ、リラックスして、パッパと直観で7〜8冊の候補を選んで示し、その中から、本人に決めてもらった。
 結局、中村哲さんの『天、共に在り』(NHK出版、2013年)が選ばれた。
 「精神が自分自身の方法で大地に根ざしている」「精神が活発発地でおもしろく動いており、生きてある厳しい状況に立ち向かっている」という私の選択の思いは、哲ちゃんの「天、共に在り」そのものだ。
 年内、対話を深めていこうと思っている――。
 何冊かを選ぶとき、ある画文集が心に止まる。
 そうして、読み直し(画文集だからすぐに読了できる)、シルクスクリーン・エッチングのチャーミングな絵をそのひとに見せていた。
 何という本か。小田まゆみさんの『ガイアの園』(現代思潮社、2004年、以下本書とする)である。
 ティク・ナット・ハンの『ビーイング・ピース』と『般若心経』が壮神社(この出版社、名前をもう聞かないな)から1990年代は出ていて(書店で注文しても絶版になっていたな)、それを図書館で借りて、読んでいた。当時、ティク・ナット・ハンが手に入りにくかった。
 それらのさし絵を、小田さんが描いていたのである。
 そのさし絵がとってもよかった。
 私が小田さんについて知っているのは、それだけ。
 それだけで十分。
 ティク・ナット・ハン、鈴木大拙、鈴木俊隆が広めた「アメリカ仏教」。
 アンベードカル、佐々井秀嶺の「インド仏教」。
 テーラワーダ(上座部)、大乗仏教以外の「アメリカ仏教」と「インド仏教」(新仏教と「新」を付けるひとがいるけど、それは差別だ)を忘れてはいけない。飛び火していることを。
 仏教仏法は神秘、奇跡、御伽噺(おとぎばなし)とは縁遠い、苦を解く技法。「Buddhism is not any special teaching, It is our human way. 仏教は何か特別な教えではありません、我々人間の道です」(鈴木俊隆、本書P.50)。
 小田さんは米国に渡り、二人の子どもを抱え、離婚。縁あって出会った、鈴木俊隆の「アメリカ仏教」を生活の中心に置いて、安心(あんじん)していた。ただそれだけ。その日々のいまここで見つけた小さい野菜、小動物のいのちの輝き。それを喜びをもって、絵にしていった。
 その絵は歌。私の中にもあなたの中にも畑のキャベツの中にもひとしくある仏の歌。
 日本国内の仏教(仏法)はカビのはえたような用語の重なりでどこか息をしていない。「アメリカ仏教」の風に吹かれて、生えたカビを遠くへ飛ばそう。
 小田さんの仏の歌の絵は、私の中にもあったカビを吹き飛ばしてくれた。チャーミングな絵をもって。
(10月10日)

| 虫賀宗博 | いまここを味わう | 12:17 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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