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連載コラム「いまここを味わう」(第28回)タリバーン――哲さん(その5)

 中村哲さんが縁あって出会ったアフガニスタンって、「どんなところなんだろうか」について――。
 ほんの少し書く。
 イスラムの教えがひとりひとりの人生で中心に置かれていることをまず言わねばならない。
 「ひとの道」を教えているんだ。
 したがって、礼拝祈りの場所のモスク、学ぶ場所のマドラッサ、学んでいる生徒たちのタリバーン。これらの用語名詞は、ひとびとの暮らしの中心に位置している。
 タリバーンはキリスト教社会ならば「ミッションスクールへ通う生徒」という程度の意味しかない。
 そのタリバーン神学生がなぜ政権を担ったのか・
 1979年に旧ソ連がなんとアフガニスタンへ侵略してきた。冷戦下の米国は代理戦争を仕掛け、CIAが「反ソゲリラ」を養成(そのゲリラのひとりがビンラディン、サウジアラビアからやってきた。米国の本質にすぐ気づき、後に2001年になんとひどい同時多発テロを決行)。
 結局旧ソ連は10万人の最強陸軍をもってしても敗北し、退却。アホなアフガニスタン侵略、チェルノブイリ(など)によって、旧ソ連そのものが崩壊。
 その後の混乱分裂内戦が続き、難民も多く、ヘトヘトになっていく。あまりにも長きに渡る戦さに疲れたとき、タリバーンがたった2万人弱の兵力によって、奇跡的にまとめあげたのであった。
 最大の要因のひとつがジルガ(長老会議)を認め、各部族の長老たちを信頼し、自治に委(ゆだ)ねたことによる。アフガニスタンはまるで500年前の日本の戦国時代のようだ。各領主に任せた上での政権運営なんだ。
 複雑な社会の流れを、幾つかのシンプルな原理で読み解こうとする考えを、原理主義という。
 「人生はカネのみ」「軍事力だけが頼り」とする考えも、原理主義である。イスラムを頼りにするタリバーンも原理主義。
 清廉素朴なタリバーン神学生は、要するに「田舎者政権」(哲さんが繰り返し言っていた)。
 時は2000年、アフガニスタンが大干ばつに襲われる。しかし、国際世論は同情のひとつもない。冷酷そのもの。さまざまな田舎者政策に対し国連は経済制裁で応える。
 国際社会(主力は米英)、タリバーンの両者、どっちもどっちの引き分けが続くときに、2001年のテロが生じ、米国が怒り狂って、報復攻撃。アフガニスタン空爆が始まる(忘れているひとが多いけど、この米国が仕掛けた戦争はまだ続いている。ベトナム戦争より長期化している)。客人歓待法は古来から現在まで生きるルール。タリバーンはビンラディンを客人として受け入れた以上、他者に引き渡すことは、ルール上できない。しかも、「田舎者」(哲さん)のタリバーンがコンピュータを使って、飛行機に乗って、ビルに突入するなんて、ありえない。
 タリバーンはすぐに倒れた。もともとたった2万人の兵力だもの。
 そして現在の暫定政権になっていくんだけど、また(タリバーン以前の)各領主が再登場し、内線が再発している。そのさ中、哲さんは水路を建設しつづけていったのである。
 何が「正義の味方米国と悪の権化タリバーン」か。
 このプロパガンダに何の検証思考もなく、すべてに追従し、イージス艦をインド洋に出し、米軍機に給油し参戦する日本。米国よりもひどいのではないか。戦争中毒の米国に、服従中毒の日本!
 哲さん、手仕事で水路(世界最長だ)をつくり、60万人〜100万人のアフガニスタンのひとびとに帰村帰農を促し、マドラッサをつくり、ひととして尊厳を与えている――ということに、「ノーベル平和賞を」との話が浮かび上がった。ノミネートされたんだ。見者(賢者)がいたんだ。選考委員会に。
 ところが、流れた。米国の反対が理由(だろう)。日本政府ももちろん反対(だろう)。哲さんのことを(信じられないけど)さんざんに言っている(んだろう)。外務省とかは。こういう現実を知っていたほうがよい。
 当時、論楽社に来た哲さんにノーベル賞のこと、聞いてみた。
 笑いながら、即答。「タリバーンのシンパ(と言われているので)にはムリ」。
 哲さんがシンパか、そうでないのかはどうでもいい。哲さん自身もどうでもいいと思っていたと思う。
 米軍は退却すべき。戦争なんかするゼニは水路づくりに使えばいいんだ。
 ただタリバーンを絶滅させようと思うならば、アフガニスタン人全員を殺す覚悟がなければ、ムリ。とにかくベトナム戦争と同じで、アフガニスタンからも米軍は去るしかない。
(1月9日)

 

| 虫賀宗博 | いまここを味わう | 06:22 | comments(0) | - | - | -









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