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連載コラム「いまここを味わう」(第32回)たったひとりのストライキから始まる

 「こうしないと生ききれないんだ、このひとは」と思った。
 このひと、グレタ・トゥーンベリさん。
 2003年にスウェーデンのオペラ歌手の母、俳優の父の間に生まれたグレタさん。現在まだ17歳の高校生である。
 グレタさんを中心としたファミリーの初めての本『グレタ たったひとりのストライキ』(海と月社、2019年10月)を読んだ。
 この本、ホームスクールに来ている小学生のひとりのお母さんから教えてもらった(ありがとう)。
 2月2日、地域の図書館に来たので、早速読んでみた。
 ちなみにその小学生、北極海の白熊のことを、わがことのように心配している。
 実際、いま北極の氷がどんどん溶けている。
 きっと白熊たちは溺れ死んでいるんだ。
 いま、オーストラリアで山火事が発生し、コアラやカンガルーが焼け死んでいる。何度も書いたようにアフガニスタンでは大干ばつが続き、高山の雪は消えつつある。逆に日本は雪ひとつ冬には降らず、夏秋には年々大型台風が来て、豪雨洪水が相次いでいる。
 多層危機である。どうなるのか。
 いくつもの要因原因が絡み合って生み出されている危機だ。
 いまの戦争経済を生みつづけるシステム。システムを根本から変えないかぎり、ますます深まっていく多層的危機。
 なのに、ほとんどのひとびとが、この危機を危機とも感じていない。ひとごとだ。どうでもいいことである。「天気のことは少し気になる」という程度ではあるけど。
 グレタさんは、この危機を全身で感じ入った。そうしないと、生ききれなかったんだ。
 世界の海に浮遊するプラスティックゴミ。
 そのゴミを集めて「島」にすると面積はメキシコより大きい。プカプカと浮遊していると、鳥や魚が食べて死んでいるんだ。
 その映画をグレタさんは見た。11歳のときだ。
 そのとき、泣いた。
 泣きつづけた。
 そうして、食べれなくなった。
 摂食障がいになり、10キロ痩せる。
 父母妹としか話せなくなる。うつ病、アスペルガー症候群、選択性緘黙(かんもく)症と診断される。
 厳しい状況である。
 しかし、耐えていく。
 きっとグレタさんには私が見えない二酸化炭素がありありと見えるんだ。
 何も行動しない私たち大人の「裸の王様」に「裸だ!」とはっきり言っている子どもとして、グレタさんは私たちの前に登場してくる。全く忖度しない。洗脳も一切されていない。
 独学自習で気候問題について学び考え、2018年8月についにスェーデン国会議事堂前で「たったひとりのストライキ」を決行していく。ひとりで始め、全世界に伝播(ぱ)していく。
 日本のほとんどのひとたちのようには空気を全く読まない。白か黒かではっきり言い、問う。そういうグレタさんの方法、スピーチに好き嫌いが生まれるのは自然。それはグレタさん自身が言っているように、病いの恵みだろう。
 グレタさんを手立てにして、多層的危機の実相に行き、エネルギーの大量消費型の生活をひとりひとりが改めてゆかねばならない。「1987年に、人類の環境貯金はつきてしまっている」(同書P.64)のだから。
 私たち人間は地球に寄生している。地球に何か与えるような共生なんてできっこない。本体の地球にこれ以上苦痛を与えない「寄生虫のモラル」を想起する以外にはない。
 グレタさん、「こうしないと生きれなかったんだね」。もっと、もっと生活を振り返り、何かの動きを出してゆきたい。
(2月6日)

 

| 虫賀宗博 | いまここを味わう | 17:53 | comments(0) | - | - | -









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