論楽社ほっとニュース

京都・岩倉の論楽社からお届けします
<< 受容の服――行司千絵さんの2月例会へ、ようこそ、ようこそ(その2) | main | 連載コラム「いまここを味わう」(第36回)殺すな >>
連載コラム「いまここを味わう」(第35回)冬の湯

 むすんで、ひらく。
 「ようこそ、ようこそ」と結ぶ。「では、またね」と開く。
 あたたかい共同体の中にいる感覚実感は持ちたいけど、執着しない。手放す。組織にしない。すぐに解散する。ゼロに戻す。
 次の月例会、講座に向け、またゼロから始め、「ようこそ、ようこそ」とゼロ地点から手紙を書く。
 論楽社づくりにおいて、それを繰り返す。
 生きてある実感がほんの少しずつ、数ミリずつ蓄積していく。
 その実感の積み重ねのようなものをほんの少し味わうことが「私の生きる意味か」と思っている。
 その「むすんで、ひらく」とき、私はどこかの山へ行く(山へ帰る)。
 どこかに小さな旅をし、湧き水を飲む。
 そうして、どこかの湯に浸かりに行く。
 冬の湯はいい。体が開き、執着と疲れが手放されていく。
 湯快だと思う。
 京都の場合、天然温泉は少ない。あっても、鞍馬、大原、嵐山の温泉は料理とセットになっていて、割高。私には京料理は不要。
 温泉法によって25度以上の泉でないと、温泉とは言えない。京都の温泉はすべてぎりぎり25度なので沸かし湯。天然の80度の温泉の掛け流しなんて、京都ではありえない、夢の話。
 したがって、京都盆地では銭湯になる。
 冬の京都盆地は湿気があって、冷える。ずいぶん減ったとはいえ、まだ府内には110軒の銭湯があると聞く。入浴料450円にて浸かることができる銭湯はいい。
 たとえば、次の三湯を紹介したい。石けんとタオルだけを持参し、ぶらりと訪ねてほしい。何かが体から手放されてゆく。気持ちがいい。
 A.船岡温泉。マジョリカタイル、軒唐破風(のきからはふ)の建物は、2003年に国の登録有形文化財。
 欧米とアジアのひとびとがけっこう来ていて、番台のおばちゃんにナントカカントカ聞いて、「キャッシュ、オンリー」と言われている。写真をとろうとするひとに「ノー フォト」とこれまたピシャリと言っている。けっこう気が強い。
 弱い打たせ湯もあり、露天風呂もあり、各種風呂がいくつかあって、サウナもある(サウナのTV、やめてほしい)。
 少し小寒い脱衣所もふくめて、全体として半世紀前の西陣の空気臭いがそのまま残ってる感じ、とてもいいと思う。
 B.サウナの梅湯。29歳の経営者が「体を洗ってから浴槽に入る」「互いのマイルールを押しつけない」なんていう手書き注意書き(英語中国語もあり)をし、マナーをつくろうとしている。銭湯に入ったことのない若いひとや外国のひとびとに声かけをしている。「浜松駅前での山本太郎の演説聞いて、彼のやる気がビンビン伝わってきた」なんていう、同じ手書き新聞を張っている。おもしろい。サウナも広くて、TVがないのが最高。モダンジャズがかかっている。だけど、それもなくてもいい。全体として、若いやる気が流れている。
 C.天然名水 白山湯。西洞院高辻の洛中の街中になる。110度のサウナがいい(TVのスウィッチを切ってほしい)。「互いに干渉しない」客層の全体力がいい。みんな裸なんだから、殺しあいもせずに、「凡夫どうしボチボチ生きていきましょう」と言えばいいか。そういえば、大昔に石川三四郎さんが「各国首脳、裸になって、銭湯に入りながら、平和を語れ」と想定していたのを、白山湯で想起したな。
(2月27日)

| 虫賀宗博 | いまここを味わう | 14:59 | comments(0) | - | - | -









      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

このページの先頭へ