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連載コラム「いまここを味わう」(第44回)「ひとが先」(文在寅)

 Eさん、資料をいつものように送っていただいて、まことにありがとうございます。
 それぞれ読ませていただきました。
 コロナウイルスに立ち向かう各国の対応がわかります。よく伝わってきますね。
 なかでも韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統、メルケル・ドイツ首相の言葉が心に沁みました。
 政治家の言葉はきわめて重要です。危機の時代のいま、大切な仕事です。
 社会に生きてあるひとびとに呼びかけ、心を耕し、そうして明日の希望を織っていく言葉です。実践に基づけられた言葉です。
 もちろん政治家ですから、さまざまな批判があって、あたりまえです。文句はいっぱい届くでしょう。
 多数派を形成し、政権を担うのです。反対派・少数派のひとびとの耳にも心にも響く言葉を投げかけ、理解を促したうえで、政策の実行を計るのです。みんなが乗っている船をとにかく難破座礁させないように運行していくのです。とてつもない数のひとびとのいのちを救うのです。
 Eさん、特に文在寅さんのがよかったです。『運命 文在寅自伝』(岩波書店、矢野百合子訳)を読んでいるかもしれませんけども、「ひとが先」「ひとが暮らす世の中」という平明であたりまえの精神が紡がれています。
 軍事政権の圧倒的な暴力に立ち向かったひとたちが韓国には生きて暮らしているのです。
 今年の4月19日の革命記念日の文さんのスピーチです。
 「4・19革命(1960年の李承晩政権を倒す)が追求した政治的・市民的な民主主義を超え全ての国民の生活を保障する実質的民主主義として拡張すること、これが今日、私たちが具現するべき4・19革命の精神と信じます。」
 「全世界が共に経験することになる‘ポストコロナ’の状況を私たちが再び開放性、透明性、民主性を基盤とする‘連帯と協力’の力で克服することができるならば世界の人々に大きな勇気を与えることができるでしょう。経済、産業、教育、保健、安全など多くの分野で新たな世界的な規範と標準を作り出すことができるでしょう。」
 「4・19革命が今日、私たちに示す真の教訓は昨日の経験が今日と未来の私たちを作るということです。」
人間が生きてある社会なんだから、「韓国がいい」なんて言っているのではありません。韓国にはきっといろんな問題があるでしょう。
 しかし、繰り返しますけど、「ひとが先」「ひとが暮らす世の中」精神が絶えず民主化闘争を推し進めてきたのです。2016年のろうそく革命に至るまでの民主化闘争の深い積み重ね。東アジアで強大な軍事政権を、すさまじい犠牲者を生みながらも倒したのは、韓国だけです。
 コロナ対策で「所得下位70パーセント」へ、国防予算を9000億ウォン削減し、当てるとも言っています。戦闘機、ヘリコプター、戦艦を削って、「ひとが先」を実践していくのです。
 各国も見習って軍縮してほしいです。
 コロナの第一派がたとえ過ぎても、第二波、三波ときっと来るでしょう。おまけに地球環境異変の台風洪水が引き続き、繰り返されること、間違いありません。日本の場合、地震だって、いつ起きてもおかしくありません。
 多層多重危機です。ひょっとしたら、飛んでもない空(くう)、無、ゼロが生じると思います。
 しかし、空、無、ゼロは何もないのではない。あらゆるものが内在し、無尽蔵であるのです。いっぱいあるのです。「軍事費をコロナ対策に回そう」との動きがもっと生まれるかもしれません。希望が掟なんですから。
 私たちの社会は、社会そのものが痩せ細っています。何かやろうとする能力も考えたりする能力も、他者と「何が正しいか」を共有する能力すらも痩せ細ってしまっています。「しょうがない」のため息だけが満ちています。
 日本には政治家がいません。なぜ「いま苦はある。でも苦は必ず取り除くことができる。方法がある。いまは互いに辛抱し、実現していこう」と言葉にできる政治家がいないのでしょうか。
(4月30日)

 

| 虫賀宗博 | - | 09:38 | comments(0) | - | - | -









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