論楽社ほっとニュース

京都・岩倉の論楽社からお届けします
<< 連載コラム「いまここを味わう」(第45回)風の記憶――出雲という故郷 | main | 連載コラム「いまここを味わう」(第47回)クリンソウの咲く山――ウラヤマ(その9) >>
連載コラム「いまここを味わう」(第46回)自分自身の魂の救い

 友人って、何か。もうひとりの私、と思う。実際の私とは違う、別の縁によって育つ、もうひとりの私自身だ、と思っている。
 そういう友人から教えられた本は読むようにしている。闇を生きる手掛かりになるから。ただし読了するのに半年も掛かったりすることもあるけどね。
 2冊の手掛かりとなる本のことを少し書く。
 山田正彦さんの『売り渡される食の安全』(角川新書、2019年8月)がそう。
 岐阜の共同体ゴーバルの石原潔さんから教えられた。ありがたい。
 山田さんは民主党政権時代の農水大臣。TPPに反対し、同大臣を辞めたひと。
 種子法を廃止し、遺伝子組み換え、ゲノム編集の大豆、トウモロコシをじゃんじゃん輸入している日本の現政府。農薬基準を400倍にもなぜか拡大緩和させ、食糧自給率もどんどん低下させ、もう、まともな独立国家とも言えないような日本の現政権。
 いやしくも政権を担う者ならば、最低限の民主・民生・民族(なつかしの三民主義、孫文だよ)ぐらいを希求するであろう。とくに民生(国民民衆の生活暮らしのこと、飢えさせないこと)ぐらいは少しは考えるであろう。それがないんだ。もう、どうなっているのか。まさしく異様な現政権である。
 そういう現在(いま)に、コロナウイルスが縁あって発生。
 現代文明の産業システムの限界点。物欲温暖化の臨界点。
 もう、無理なんだ。これ以上は。
 ホメオスタシス(恒常性)がガイア(地球)において働いているんだ。きっとね。
 コロナそのものが悪いんじゃない。敵じゃない。
 生命系全体の利他的な動きとして、遺伝情報を水平移動させていることは間違いない。
 あんな小さいウイルスだけど(1万分の1ミリメートル、マスクなんかで防御できるわけがないじゃないか)、ウイルスの動きを受け入れていく以外に、人間にはやれることはない。もういちど、コロナは敵じゃない。
 問題はウイルスそのものではない。
 ウイルスよりも恐ろしい政治の蔓延だ。
 60年前の水俣病のときだって、政府官僚はチッソを守った。9年前の原発事故だって、政府は電力会社を守った。惨事便乗型の強欲資本主義が次々と、恐ろしく大きくなっていくだけではないか。どうするのか。
 考えているそんなとき、ジェイムズ・H・コーンの『誰にも言わないと言ったけれど——黒人神学と私』(新教出版社、榎本空訳、2020年3月、以下本書とする)が届いた。
 これも岐阜の共同体ゴーバルの桝本尚子さんから送られた。ありがたい。
訳者の榎本空さん、桝本さんの娘の百々子さんと結婚。『愛の余韻』の榎本てる子さん(2019年9月12日のコラム日録「山吹と虹」にある)の甥。これらは本書の内容とは直接無関係のことだけど、記す。
 筆者コーンのことも黒人神学があるということも、全く知らなかった。
 J・コルトレーンのジャズが好きなので、マルコムXのことを少し知っており、アパルトヘイト時代の南アで白人たちに立ち向かっていったスティーブ・ビコがいまでも好きなので、とってもおもしろかった。きわめて厳しいことを綴っていることに「おもろい」と言っちゃあ、ヘンだけど、「何がほんとに大切なのか」「何がいちばんほしいのか」「何を実現したいのか」が本書にはあるので、オモシロイ。
 ボールドウィンを引用しながら、コーンは書く。
 「『神の性質とは、一人一人の人間の側における永続的な創造の業なのです。私たちは自分の魂の救いに責任があります』。自らの『健康や病』『生と死』に対して究極的な責任を負っているのは、『それぞれの神』の前に建つ私たち人間だけなのだ」)(本書P.231)。
 小さく、低くされて、その死の象徴の十字架すらが商標のようになってしまっている白人キリスト教会。黒人を自由に殺りくし、リンチの木にぶらさげつづる白人人種差別者たち。十字架は黒人たちにとって実存そのものだったのだ。
 本書をいま白人たちはどう読むのだろうか。アメリカ先住民をジェノサイドし、同じように黒人を虐殺しつづけ、ベトナム戦争でベトナム人を抹殺し、日本に原爆を落とし、植民地支配しようとしている「戦争中毒」の米国白人たちの魂の問題を本書は逆照射。米国の根本の難問である。
 そうして、黒人神学すらなく、末法のさ中の日本の腑抜けの魂の問題。
(5月14日)

| 虫賀宗博 | いまここを味わう | 14:35 | comments(0) | - | - | -









      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

このページの先頭へ