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連載コラム「いまここを味わう」(第57回)仙丈ヶ岳へ――ウラヤマ(その10回)

 7月23日(木・祝)に信州の伊那谷へ行ってきた。
 縁があって、伊那谷にはいままで3回行っている。
 木曽山脈(中央アルプス)と赤石山脈(南アルプス)に挟まれた伊那谷、思いのほか空が広い。両山脈の山稜線で空は切りとられるけども、そのことによって陰影がよりいっそう増す青空がきれい。とりわけ冬の夕日が美しい。
 もっとも美しい風景のひとつが伊那谷にはある。
 伊那谷から歩いて、仙丈(せんじょう)ヶ岳(3033メートル、以下仙丈とする)へ登る――という思いが湧きつづけていた。そのために伊那谷へ向かった。
 北岳(3192メートル)に登ったときに眺めた仙丈が美しくて忘れがたいこと。歩いて登りたかったこと(スーパー林道をバスに乗っては登りたくない、山屋だったら、自分の足で登りたいはず、他にもロープウェイやバス道を付けた高山じゃけっこうあるね)。それに3000メートルの空気を久しく吸っていないこと。
 以上の理由の他に、友人のKさんが電磁波の影響で伊那谷の高遠(たかとお)の奥の奥に移舎したことも大きくあるかもね。
 ところが、コロナ禍ゆえに各山小屋がことごとく閉鎖休業。
 仙丈の頂上に立つことは断念し、日帰りで北沢峠付近まで登るということを再計画。
 肝腎の天気が良くない。梅雨の長雨がなかなか終わらない。
 それどころか前夜(7月22日)には洪水警報が出るほどの大雨。
 日帰り登山決行の7月24日も雨は止んでいるけど、いつ降り始めてもおかしくない灰色の曇空。
 Kさんの連れ合いに車で登山道の入り口まで送っていただく。
 そこで「崩落」の非常線が張ってあるのを発見。どんな規模の崩落かはわからない。「入山禁止」である――。
 ということで、第10回のウラヤマ徘徊登山は終わる。
 撤退もひとつの登山である。
 そう思って、パアッと頭を切り換えた。
 Kさんの家に戻る。
 Kさんの家、TVはなく、ケータイもない。電磁波から遠く離れないと、体に異変が起きる。
 家のすぐ横の渓流が大きな音をたてて、流れ落ちている。カツラ、カラマツの木に囲まれ、家族5人にネコ、ニワトリともに静かな暮らしが展開されてあった。
 Kさんは友人だ。友人とは何か。もういちど友を定義しなおしてみよう。A. 友人とは、もうひとつの生き方で選びとっている私自身。私にもこういう暮らしを選びとっている可能性はあった、と思うのである。B. Kさんは炭鉱の中のカナリアである。まっさきに鉱内の気の異変をキャッチして、鳴くカナリアである。
 私は、まだ電磁波にもイソシアネート化合物(香害の原因の猛毒)にも反応しない。そういう私が異常なのではないか。反応するひとを過敏と済ます社会が異常なのではないか。なんでこんなにもいのちを粗末にして、平気なのか。
 そんなこと、思うのである。
 あるユマニストの言葉が最近心に鳴り響く。「ワシら人類は滅びゆくかもしれない。でも、抵抗しながら、滅んでいこう」。抵抗が存在理由だ。
 Kさんの家にもういちど行きたい。そうして、もういちど仙丈へチャレンジしたい。
 私のウラヤマは仙丈へ至ると思う。
(7月30日)

| 虫賀宗博 | いまここを味わう | 10:53 | comments(0) | - | - | -









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